こんにちは!現在コンサルティングファームに勤めているビジネスパーソンの筆者です。
将来フリーランスのコンサルタントとして独立しようかと考えたとき、「年収1000万円稼いだら手取りはいくらになるんだろう?」という疑問が湧きました。会社員の年収1000万円とフリーランスの年商1000万円では性質が異なり、税金や社会保険料の負担も大きく変わります。
この記事では フリーランスのコンサルタントが年商(売上)1000万円を得た場合 を想定し、支払う税金・社会保険料の内訳や計算方法、実際の手取り額の試算、そしてフリーランスになることのメリット・デメリットについて、自身の調査・経験も踏まえてわかりやすく解説します。独立を検討している方はぜひ参考にしてくださいね。
概要:年商1000万円でも手取りは思ったほど多くない?!
フリーランスとして年商1000万円を達成すると、一見「年収が1000万円」と聞こえますが、実際に自分の手元に残るお金(手取り)はそこから経費や税金・保険料を差し引いた金額になります。会社員で年収1000万円の場合、給与所得控除や会社が一部負担する社会保険料などがあり手取りは比較的多くなります。一方、フリーランス(個人事業主)の場合は収入=売上であり、必要経費を自分で負担し、さらに税金や社会保険料も全額自分で納める必要があります。そのため、売上1000万円すべてが自分の収入になるわけではない点に注意が必要です。
ざっくり言うと、フリーランスが年商1000万円を稼いだ場合、経費にもよりますが手取りは売上の60〜70%程度になるケースが多いです。つまり、1000万円稼いでも実際に自分が自由に使えるお金は600〜700万円前後になる可能性があります。「え、そんなに減っちゃうの?」と驚くかもしれませんが、大きな理由は税金と社会保険料の負担です。これから、その内訳を詳しく見ていきましょう。
フリーランスが負担する主な税金・社会保険料
フリーランス(個人事業主)になると、以下のような税金・社会保険料を自分で納めることになります。それぞれ年商1000万円規模の場合の概算額も示します。
- 所得税 :個人の所得(利益)に対してかかる国の税金です。所得税は累進課税(所得が多いほど税率が上がる仕組み)で、所得額に応じて5%〜45%の税率が適用されます。計算方法は後述しますが、年商1000万円で経費を引いた利益に対する所得税は約90〜100万円前後になることが多いです(各種控除適用後の課税所得にもよります)。
- 住民税:地方自治体(都道府県+市区町村)に納める税金です。前年の所得をもとに課税され、税率は一律約10%(都道府県民税4%、市町村民税6%が標準)です。フリーランスの場合、住民税は自分で年4期などに分けて納付します。年商1000万円クラスの所得だと、住民税はおよそ70〜80万円程度になるでしょう。
- 個人事業税:フリーランスなど個人事業主のうち一定の業種に課される地方税です。コンサルタント業は個人事業税の課税対象業種に含まれ、税率は所得に対して5%(都道府県による)です。ただし所得から年間290万円の事業主控除が引かれ、その超えた部分に課税されます。例えば税率5%の場合、年商1000万円で十分な利益が出ていれば年間で20〜30万円前後を個人事業税として納める可能性があります(自治体や利益額により異なります)。
- 国民健康保険(国保):会社員時代の健康保険と違い、フリーランスは市区町村の国民健康保険に加入します。保険料は前年の所得に応じて算出され、自治体ごとに異なる料率が設定されています。所得が高いと保険料も高額となり、年商1000万円クラスの方ですと年間で70〜80万円程度の国民健康保険料を負担するケースもあります(40歳以上は介護保険料が加算されもう少し増えますが、ここでは30代を想定しています)。国民健康保険料には上限額もありますが、年収1000万円規模だと上限近くになる可能性があります。
- 国民年金:フリーランスは厚生年金ではなく国民年金に加入します。国民年金保険料は全国一律で、令和5年度は月額約16,520円でした。年間では約20万円弱になります(多少の改定はあります)。この保険料も自分で納める必要があります。将来の年金受給のための大事な掛金ですが、毎月の負担としては覚えておきましょう。
以上が主な税金・社会保険の項目です。このほか、事業用の資産(例えば事務所として自宅とは別に不動産を所有している場合など)があれば固定資産税が発生することもありますが、ここでは一般的なケースに絞ります。
では、これらの税金・保険料が実際どのように計算されるのか、もう少し具体的に見てみます。
所得税の計算方法(ざっくり解説)
所得税は「(収入-経費)-各種控除」に対して課税されます。まず収入から経費を引いたものが「所得(事業所得)」です。さらに、青色申告をしていれば青色申告特別控除65万円が所得から差し引かれます(※適切な帳簿付けを行い青色申告承認を受ければ最大65万円控除)。そして全ての人に適用される基礎控除48万円(合計所得が2400万円以下の場合)も差し引かれます。また、後述の国民年金や国民健康保険の支払いも社会保険料控除として全額が所得から控除されます。その他、生命保険料控除や扶養控除など個々の状況に応じた控除もありますが、ここでは一般的に誰もが受けられる控除を中心に考えます。
こうして算出された課税所得に対して税率を掛けて所得税額を計算します。所得税の税率は累進課税で、課税所得が
- 195万円以下の部分…5%
- 195万円を超え330万円以下の部分…10%
- 330万円を超え695万円以下の部分…20%
- 695万円を超え900万円以下の部分…23%
- 900万円を超え1,800万円以下の部分…33%
- 1,800万円超…40%(※所得税はさらに4,000万円超で45%の税率区分があります)
と段階的に上がっていきます。また、税率で計算した金額から一定の速算控除額を差し引いて最終的な税額を出す方法がとられていますが、大まかな計算イメージとしては「高い所得層ほど手取りに占める税金の割合が大きくなる」と考えておけばOKです。
年商1000万円のフリーランスのケースでは、経費や控除後の課税所得がおよそ600〜700万円台になることが多いでしょう。その場合、所得税率は最大でも23%部分まで(一部33%がかかるかどうかギリギリのライン)です。具体的な所得税額は計算過程によって異なりますが、先ほど概算したように約90〜100万円前後になると見込まれます。
住民税の計算方法(ざっくり解説)
住民税(都道府県民税+市町村民税)は、前年の所得金額に基づいて一律の税率を掛けて計算されます。標準的な税率は10%(都道府県4%、市区町村6%)です。所得税と異なり累進課税ではなくフラットな税率ですが、所得から基礎控除や社会保険料控除など一定の控除を差し引いた後の金額に対して10%課税されます。
例えば前年の課税所得が600万円だった場合、住民税は概ね600万円×10%=60万円となります(実際には均等割といって数千円〜数万円の定額部分も自治体ごとに加算されますが、大勢に影響はありません)。年商1000万円規模のフリーランスの場合、住民税は年間で70万円前後になるケースが一般的です(所得金額によりますがだいたい所得税額の約6〜7割程度が住民税額になるイメージです)。
住民税は毎年6月頃に自治体から納税通知書が届き、一括または年4回の分割で納めます。フリーランスになると会社が天引きしてくれないので、自分で納付管理する必要があります。
個人事業税はかかる?(コンサル業は要注意)
個人事業税は、都道府県が課税する事業税で、フリーランスのすべてにかかるわけではなく業種によって課税される場合があります。コンサルタント業(いわゆる「consulting」業務)は、多くの自治体で個人事業税の課税対象業種に該当します。税率は業種ごとに異なりますが、コンサルタント業の場合は**5%**が適用されることが一般的です(東京都など標準税率の場合)。
計算方法は、年間の事業所得(利益)から290万円の事業主控除を引いた残りに税率を掛けます。例えば年間の事業所得が800万円だった場合、800万円-290万円=510万円に対して5%課税されますので約25.5万円が個人事業税となります。事業所得がさらに大きければ税額も増え、30万円近くになることもあります。
個人事業税は毎年8月頃と11月頃の年2回に分けて納付します。これも会社員時代には無かった負担増になりますので、忘れずにスケジュール管理と資金準備をしておきたいところです。
なお、業種によっては個人事業税が非課税(例えば執筆業やデザイナーなど一部の自由業)だったり税率が異なったりします。コンサルタントは課税対象と思っておいた方がよいでしょう。
国民健康保険料の計算と負担感
会社員時代は会社と本人が折半で健康保険料を払っていましたが、フリーランスになると国民健康保険(国保)に加入し全額自己負担となります。国民健康保険料は前年所得に応じて決まりますが、自治体によって細かな計算式が異なります(医療給付分、支援金分、介護分〈40歳以上〉などに分かれ、それぞれに料率と上限があります)。
具体例として、東京都世田谷区在住・30歳・独身の場合を考えると、年商1000万円・経費控除後の所得が約800〜900万円あったケースで年間80万円前後の国民健康保険料が発生するシミュレーション結果が出ています。これは月額にすると6〜7万円程度です。かなり高額ですが、国保は所得が高い人ほど保険料も大きくなる仕組みなので、フリーランスで成功して収入が上がるとこの負担は避けられません。
国民健康保険料には年間の上限額が設定されており、2023年度時点では世田谷区の場合、40歳未満の方で年間約100万円前後が上限となっています(内訳:医療分上限66万円、支援金分上限22万円、※介護分は40歳以上のみ適用で上限17万円)。年商1000万円クラスですと上限に達しないまでも相当近い負担になるわけですね。
保険料は自治体から届く納付書で年8〜10回程度に分割して支払うか、口座振替で毎月支払う形になります。高額なので支払い忘れのないよう注意が必要です。
国民年金の支払い
国民年金は、自営業やフリーランスの方が加入する基礎年金制度です。20歳以上60歳未満の全国民が加入義務を負っています。保険料は一律で、令和5年度は月16,520円でした(毎年多少見直しがあります)。年間にすると約198,000円、だいたい20万円前後の負担と考えてください。
会社員の場合は厚生年金に加入し給与から天引きされますが、フリーランスは自分で納付書や口座振替で納めます。厚生年金に比べると保険料は安いものの、将来もらえる年金額も国民年金のみではそれほど多くありません(老後資金は自助努力で積み増す必要があります)。毎月のキャッシュフロー上は約1.6万円の支出増となりますが、老後のためにも忘れずに払い込んでおきましょう。
なお、国民年金には付加年金や国民年金基金といった、任意で上乗せして将来年金額を増やす仕組みもあります。余裕があれば検討してみる価値がありますが、まずは必須の国民年金保険料を確実に納めることが大切です。
消費税の納税義務と金額:簡易課税制度 vs 本則課税
次に消費税についてです。売上が1000万円規模となると、消費税の扱いも無視できません。日本では現在消費税率は10%(軽減税率8%の品目もありますが、サービス業には基本10%)です。フリーランスでも、課税事業者に該当すれば自身の売上に対する消費税を納める必要があります。
消費税の納税義務はいつから生じる?
ポイントは、消費税は売上規模に応じて納税義務が発生するかどうかが決まるという点です。具体的には、「基準期間」と呼ばれる期間の課税売上高が1000万円を超えると、消費税の課税事業者となるというルールがあります。個人事業主の場合、基準期間とは「前々年」のことです。
- 開業1年目と2年目:前々年が存在しない(または開業初年度で売上が基準に満たない)ため、基本的に消費税の納税義務は免除されます(免税事業者となる)。
- 3年目以降:前々年(開業1年目または2年目)の売上が1000万円を超えていた場合、その年は消費税課税事業者となり、消費税を申告・納付しなければなりません。例えば、1年目・2年目と売上を伸ばして2年目に1000万円超えを達成した場合、前々年(=1年目)は関係ないので3年目も免税ですが、4年目は2年前(=2年目)が基準期間となり売上1000万超なので課税事業者になります。
要するに、新規開業から最初の2年間は消費税を納めなくて良いケースが多いですが、その後年商1000万円を継続すると3年目あるいは4年目から消費税を支払う必要が出てくるのです。
ただし例外もあり、前事業年度の上半期(1月〜6月)の課税売上高が1000万円超の場合は、基準期間が基準を満たしていなくても翌年度から課税事業者になるルールがあります(急成長している場合の特例的な判定です)。フリーランスで年商1000万円規模だと、この特例に引っかかるケースはあまり無いと思いますが覚えておきましょう。
消費税の計算:本則課税と簡易課税
では、課税事業者になった場合、いくら消費税を納めることになるのかを考えます。
消費税の納付額は基本的に**「受け取った消費税 - 支払った消費税」で計算されます。これを本則課税(一般課税)といいます。例えば年商1000万円(税抜き)で全て10%課税売上なら受け取った消費税は1000万円×10%=100万円です。一方で事業のために経費等で支払った金額にも消費税が含まれており、それを仕入税額控除**として差し引くことができます。仮に経費で年間200万円(税抜)使っていた場合、支払った消費税は200万円×10%=20万円となり、納めるべき消費税は100万円-20万円=80万円となります。
しかし、毎回すべての経費にかかる消費税額を計算・記帳するのは手間がかかります。そこで中小事業者向けに簡易課税制度というものがあります。簡易課税制度を選択すると、実際に支払った消費税額ではなくみなし仕入率という業種別の一定割合を使って仕入控除額を計算します。具体的には、事前に簡易課税選択の届出をすることで、前々年の売上高が5000万円以下であればその年は簡易課税を適用できます。
業種によってみなし仕入率は異なりますが、ざっと以下のような割合です。
- 第1種事業(卸売業): 90%
- 第2種事業(小売業): 80%
- 第3種事業(製造業等): 70%
- 第4種事業(飲食業等): 60%
- 第5種事業(サービス業等): 50%
多くのフリーランスのコンサル業は第5種事業(サービス業その他)に該当し、みなし仕入率50%となります。つまり、売上に含まれる消費税額の50%を仕入に使ったものとみなして控除できるイメージです。具体例として、年商1000万円(税抜)のコンサル業であれば受け取った消費税100万円のうち50万円が仕入相当とみなされます。結果、納める消費税額は残り50万円という計算になります。
簡易課税制度のメリットは計算と帳簿管理が簡単になる点ですが、デメリットとして実際の経費で支払った消費税額がみなし率より多い場合でも一律の計算になるため、不利になるケースもあります。例えば大きな設備投資をした年などは、本則課税で実額控除した方が有利ですが、簡易課税では一律計算のため控除不足になりがちです。逆に経費があまり掛かっていない業種では簡易課税の方が得をすることもあります(フリーランスのコンサルは経費が少なめなので簡易課税が有利なことも多いでしょう)。
開業から2年間の消費税「免税事業者」制度と注意点
前述の通り、新規開業のフリーランスは原則として最初の2年間は消費税の納税が免除されます。この期間、売上に対する消費税をクライアントから預かっていても国に納めなくてよいため、言ってしまえば消費税分がそのまま自分の収入になる状況です。ただし、この免税期間にはいくつか注意点があります。
まず、免税事業者である期間も、取引上は請求書に消費税相当額を記載して料金をもらうこと自体は違法ではありません。 多くの企業クライアントは消費税相当額も含めて支払ってくれるでしょう。例えば1000万円(税抜)の契約なら、本来消費税100万円で合計1100万円支払うところ、フリーランスが免税事業者ならその100万円を納税せず手元に置いておけます。一見お得ですが、この消費税相当分はあくまで預り金のようなものと考えておくことをお勧めします。というのも、免税期間が終われば今度は消費税の納付が始まり、その年から急に100万円前後の納税が発生し得るからです。免税期間中に消費税分まで使い切ってしまうと、いざ課税事業者になったときに支払いに困る可能性があります。
特に、3年目または4年目以降に課税事業者になりそうな場合、免税期間中から消費税分を積み立てておくくらいの慎重さがあっても良いでしょう。例えば毎月売上の10%を別口座にプールしておけば、いざ消費税を納めるときにも慌てずに済みます。
もう一点、2023年10月からインボイス制度(適格請求書保存方式)が開始された影響にも触れておきます。インボイス制度の下では、課税事業者のみが「適格請求書発行事業者」として消費税額を明示したインボイスを発行できます。免税事業者のフリーランスはインボイスを発行できないため、取引先によっては「消費税の仕入控除ができないから、取引を継続するなら登録してほしい」と求められる場合があります。フリーランスとして仕事を得る上で不利にならないよう、場合によっては開業後2年以内でもあえて課税事業者になりインボイス発行事業者に登録する選択肢もあります。これは取引先との関係や自分の売上規模次第ですが、頭の片隅に入れておきましょう。
まとめると、開業から2年間は消費税を納めなくてよいメリット期間ですが、その間の消費税分収入に浮かれず、課税事業者になるタイミングを見据えて計画的に資金管理することが大事、ということです。
必要経費で変わる実質所得:経費はどれくらいかかる?
フリーランスのコンサルタントは基本的に自分の知識やスキルを提供するビジネスなので、製造業のように原材料を仕入れたり大量の在庫を抱えたりといった経費は発生しにくいです。しかし、全く経費ゼロというわけにもいきません。収入を得るために必要な支出は経費として計上できるので、上手に活用すれば節税にもなります。
では、年商1000万円規模のフリーランスコンサルの場合、どの程度の経費がかかるものでしょうか。もちろん人によって様々ですが、以下は経費の一例です:
- オフィス代:自宅を事務所兼用にすれば家賃の一部を按分できますし、コワーキングスペースを利用する場合はその利用料が経費になります。フリーランスだと毎月数万円程度をオフィス代に充てる人もいます。
- 通信費・光熱費:仕事で使う電話代やインターネット通信費、パソコンやスマホの電気代なども事業割合に応じて経費にできます。額は大きくありませんが塵も積もればです。
- 消耗品費・備品:パソコン、モニター、プリンター、文具類など業務に必要な備品購入費用。パソコンなど高価なものは減価償却資産になりますが、一定額以下なら全額経費計上できます。数年おきに買い替えるとまとまった経費になります。
- 交通費・出張費:クライアント先への訪問交通費、新幹線代、場合によっては宿泊費なども経費です。案件で全国飛び回るような場合は馬鹿になりません。
- 交際費:顧客との会食や打ち合わせ時のお茶代など、仕事上必要な接待交際費も一定範囲で認められます。
- 外注費:自分が請け負った仕事の一部を他の専門家に委託したり、経理処理を税理士にお願いしたりする費用も経費です。忙しくなってきたらアシスタントや税理士に依頼することも考えられます。
- その他:業務関連の書籍購入費、セミナー参加費、資格維持の費用なども経費になります。また、売上を上げるための広告宣伝費を使うケースもあるでしょう。
こうした経費が年間どれくらいになるかは働き方次第ですが、フリーランスコンサルの場合、売上の10〜20%程度が経費になることが多い印象です。比較的無駄を省いて効率よくやれば10%(つまり1000万円の売上に対し100万円の経費)くらいに収めることも可能でしょうし、積極的に設備投資や人材活用をすれば20%(200万円)あるいはそれ以上使うこともあります。
経費を使えば使うほど所得が減って税金も下がるため、節税の面ではメリットがありますが、当然ながら経費は自分のお金を使うことに変わりありません。あくまで「必要な支出をして、その分税金が安くなる」という考え方で、無理に経費を増やすのは本末転倒です。フリーランス1年目はなるべく固定費をかけず、利益率高く稼ぐことを目指し、必要に応じて徐々に経費を投下して事業規模を拡大する、というのが安全策でしょう。
では、いよいよ実際の手取り額をシミュレーションしてみます。
年商1000万円フリーランスの手取り額シミュレーション
それでは具体的な数字で「売上1000万円の場合の手取り額」を試算してみましょう。ここではケーススタディとして以下の条件を置きます:
- 前提条件:東京都内在住・30歳・独身(一人暮らし)、フリーランス歴2年目(消費税免税事業者)、青色申告(65万円控除)、扶養家族なし
- 年間売上:1000万円
- 年間必要経費:120万円(毎月10万円の経費を想定)
- 年間事業所得:880万円(=1000万円-120万円の経費)
まず事業所得880万円に対し、青色申告特別控除65万円と基礎控除48万円を差し引きます。さらに社会保険料控除として国民年金約20万円+国民健康保険約75万円(前年同程度の所得だったと仮定)も差し引きます。課税所得の計算はおおむね以下のようになります。
課税所得 = 880万円(事業所得)
- 65万円(青色申告控除)
- 48万円(基礎控除)
- 95万円(社会保険料控除の合計※)
= 約672万円
※社会保険料控除95万円内訳:国民年金約20万円+国民健康保険約75万円。国保額は厳密には前年所得等から計算されますがここでは概算。
課税所得が約672万円となりました。この金額に対し所得税を計算します(672万円は税率20%の層に収まりますが一部23%にもかかります)。所得税額は概算で約85〜90万円程度になります。仮に所得税を90万円としましょう。
次に住民税ですが、住民税では青色控除が10万円(住民税の青色控除は最大55万円)である点など細かな違いはあるものの、簡便計算では所得税の課税所得に近い金額に対し10%課税と考えて大きくズレません。課税所得672万円に対し10%で約67万円、均等割等を加味して約70万円と見積もります。
個人事業税は所得880万円から事業主控除290万円を引いた590万円に5%課税で約29.5万円、概算約30万円とします。
国民健康保険料は880万円の所得だと当年は前年所得に基づくため少し低めかもしれませんが、2年目とのことなので前年(1年目)も近い所得があったと仮定し約75万円とします。
国民年金保険料は約20万円(月1.6万強×12)です。
ではこれらをすべて差し引いてみます。
- 売上(年収ベース):1000万円
- 経費:▲120万円
- 事業所得:=880万円
- 所得税:▲90万円
- 住民税:▲70万円
- 個人事業税:▲30万円
- 国民健康保険料:▲75万円
- 国民年金保険料:▲20万円
手取り額(事業所得から税・保険料を差し引いた実質的な可処分所得)は、880万円 - (90+70+30+75+20)万円 = 880万円 - 285万円 = 約595万円となりました。
つまり、年商1000万円で経費120万円のケースでは、手元に残るお金は約600万円弱という試算結果です。 これだけ見ると「1000万円稼いだのに半分ちょっとしか残らないの?」と感じるかもしれません。しかし、ここから経費120万円分は既にビジネス上使っているわけですし、税金や保険料も将来の社会保障や公共サービスへの拠出と考えれば、全てが消えてしまうわけではありません(特に年金は自分の老後資金になります)。
なお、上記シミュレーションでは消費税は考慮していません(免税事業者の前提)。仮に消費税課税事業者となり、本則課税で年間80万円の消費税を納める状況になれば、その分さらに手取りは減ります。例えば消費税▲80万円が発生すると手取りは約515万円となり、かなりインパクトがあります。逆にもっと経費を増やせば所得・税金が下がり手取り割合は変わるかもしれませんが、経費も使っているお金なので手取り計算には含めない方がよいでしょう。
手取りは条件次第で増減します。たとえば、
- 独身ではなく配偶者や扶養家族がいれば配偶者控除・扶養控除で所得税・住民税がもう少し下がります。
- 経費が少なく利益が多ければその分税金も上がります(手取り額自体は増えますが税負担率も上がる)。
- 住んでいる自治体によって国民健康保険料は変わります。
- 40歳以上になると介護保険料が国民健康保険に上乗せされますし、扶養家族が国保にいると世帯の保険料も増えます。
いずれにせよ、年商ベースの額面と実際の手取りには大きな差が出る点はしっかり認識しておく必要があります。
フリーランスになるメリット・デメリット(リアルな本音)
数字を見ると税金や保険料の負担がかなり大きく、「フリーランスって大変そうだな…」と思われたかもしれません。ここでは、フリーランスに転向することのリアルなメリット・デメリットについて、筆者の考えも交えて整理してみます。
デメリット・リスク面
- 収入が不安定になる:会社員と違い、毎月決まった給料が保証されません。案件獲得状況によって収入0の月もありえます。病気やケガで働けない期間も、そのまま収入減となります。安定性が低い分、精神的なプレッシャーは大きいでしょう。
- 税金・社会保険料の負担増:ここまで説明した通り、フリーランスは自分で全て支払うため手取りベースでは会社員より負担が重くなりがちです。特に国民健康保険料は高額で驚くかもしれません。また、所得が高くなるほど累進課税で税率も上がります。節税の知識を持っていないと損をしやすい環境です。
- 社会的信用面:フリーランスはローンを組みにくい、賃貸の審査で不利などと言われます。実際、収入証明や職業欄で会社員に比べハードルを感じる場面はあります。特に独立直後は実績がないため信用を得にくいです。
- 福利厚生や退職金がない:会社員なら会社が用意してくれる福利厚生(健康診断、社員割引、社食など)や退職金制度、企業型年金などが一切なくなります。有給休暇もありません。全て自分で手当てする必要があります。例えば退職金代わりに自分で積立投資をする、病気時に備えて民間の所得補償保険に入る、など自己防衛策が必要です。
- 全てが自己責任:フリーランスは経理・確定申告から営業活動まで自分で行わねばなりません。専門外の業務にも時間を取られるため、最初は戸惑うことも多いでしょう。また、仕事の結果についても全責任を自分が負います。クレーム対応も含め、看板となる会社が無い分自分自身が信用そのものです。常に自己研鑽と自己管理が求められます。
メリット・魅力面
- 収入アップのチャンス:フリーランスは自分の頑張り次第で収入を大きく伸ばすことができます。クライアントと直接契約すれば中間マージンもなく、高単価案件を複数掛け持ちも可能です。年商1000万円超えも夢ではなく、実力次第で青天井なのは大きな魅力です。会社員のように昇給を待つ必要はありません。
- 自由な働き方:働く時間や場所を自分でコントロールできます。プロジェクトを自分で選べるので、興味のある仕事に集中できます。例えば「夏は長めに休暇を取って旅行に行く」「子供の行事がある日は休む」「深夜に作業して昼は休む」など、ライフスタイルに合わせて柔軟に働けるのはフリーランスの特権です。
- 経費で節税・生活コスト削減:仕事に関係する支出を経費にできるため、実質的に生活コストの一部を税引前のお金で賄えるメリットがあります。例えば、自宅家賃の一部を事務所分として経費計上すれば、その分所得税・住民税が減ります。携帯電話やPCも仕事で使うなら経費です。会社員では自己負担だったものが事業経費化でき、税金が安くなる恩恵があります。
- 人間関係のストレス減:会社特有の煩わしい人間関係や組織政治から解放されます。上司や部下に悩まされたり無駄な会議に拘束されたりすることがなくなり、ストレスフリーな環境で本来の仕事に集中できます。苦手なクライアントとの契約を更新しないという選択肢もあります。
- キャリアの充実・成長:フリーランスになると嫌応なく自己研鑽が必要になりますが、それがスキルアップや成長につながります。様々な案件を経験する中で業界の知見が広がり、人脈も多様になります。また、自分で事業を回すことで経営者的視点も身につきます。これらは将来的に起業したり再び就職したりする際にも大きな武器になるでしょう。筆者自身、独立を検討する中で簿記や税務の勉強を始めましたが、結果としてビジネスパーソンとしての総合力が上がったと感じています。
このようにフリーランスにはリスクもありますが、それを上回るやりがい・メリットを感じて独立している人も多いです。特にコンサルタントのような専門性の高い職種では、自分の裁量で仕事を進められるフリーランスの環境がマッチするケースも多いでしょう。
前向きなまとめ:準備をすれば年収1000万円も夢じゃない
フリーランスのコンサルタントが年商1000万円を稼いだ場合の税金・手取り額について、かなり詳細に見てきました。数字だけ見ると「うわ、大変そう…」と思われたかもしれません。しかし、大事なのは事前に知っておくことです。税金や社会保険のしくみを把握し計画的に対策しておけば、決して怖がる必要はありません。
ポイントのおさらい:
- 年商1000万円でも経費や税金・国保・年金を差し引くと、手取りはだいたい600〜700万円程度になる(状況により前後します)。
- 所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険・国民年金と、多くの税金や保険料を自分で納める必要がある。その分会社員より控除が多く使えたり経費算入できるメリットもある。
- 消費税は年商1000万円を超えると原則として課税事業者となり、納税義務が生じる(ただし開業後2年間は免税事業者になれる)。簡易課税制度を使えば計算が楽になるが、自分の事業にどちらが有利か見極めよう。免税期間中も将来の納税に備えてお金を管理しておくことが大切。
- フリーランスは収入をコントロールしやすく夢がある一方で、収入が不安定・社会保障が手薄・全て自己責任などのリスクがある。しかし自由度ややりがい、収入アップの可能性など魅力も大きい。
筆者自身、こうした情報を調べていく中で不安が解消され、「しっかり準備すればフリーランスとしてやっていけるかもしれない」という前向きな気持ちになりました。もちろん独立には勇気が要りますが、数字の裏付けがあれば計画的に挑戦できるものです。
最後に、フリーランスへの転向を考えている皆さんへ。税金やお金の管理は避けて通れませんが、専門家に相談したり、会計ソフトを活用したりすれば難しいことはありません。 心構えと準備次第で、年収1000万円も夢ではなく手が届く目標になるでしょう。リスクを把握しつつもポジティブに、自分の望むキャリアを描いていってくださいね!
あなたのフリーランスとしての成功を応援しています。ぜひ一歩踏み出す参考になれば幸いです。