経営(戦略)コンサルタント志望者の中には、仕事そのものに興味があるだけでなく、コンサルタントという仕事を通して特定のスキルを身に着けたいと考えている人が多くいます。
私自身も、新規事業の戦略策定のスキルや、事業会社では身に着けるのが困難だと感じていた”未知の状況”でも短い期間で成果を出すスキルを身に着けたくて事業会社から転職しました。
以下に自分自身が事業会社から戦略コンサルタントに転職して、強化されたスキルを記載します。
コンサルタントといってもポジションによって必要とされるスキルが異なるので、想定している状況は事業会社出身者がスタッフ職で転職して2~3年働いた場合です。
①調査・分析スキル
一つ目は調査、分析系のスキルです。これは、短期間で圧倒的に身に付きます。
なぜなら、高いプレッシャーの中で、短期間に大量に調査・分析業務を行うからです。
戦略系の案件であれば、基本的に2~3か月で1つの案件を回します。それは、3か月に一度、新しい業界や企業の構造を徹底的に理解することを意味します。
- 論点は何だから、何を調べるべきか?
- 調べ方にはどのような方法/ツールがあり、今回は何が適切か?
- 人に聞く場合は、どのような準備をすればよいか?どのような聞き方をすればよいか?
- 調べた内容はどのようにまとめて示唆をだすべきか?
これらリサーチ業務を自律して高い精度で行えるようになるのが、戦略コンサルタントとしてワークする第一歩になります。
コンサルタントの仕事が”意外と泥臭い”と言われる所以の一つがこのリサーチ業務で、コールドコールでのアポ取りやミステリーショッパーをすることもよくあります。
これらリサーチ業務をクライアントにとって意味のある示唆を見つけること(=社内の上司に怒られない)ができるように必死でこなします。
私の元上司は、示唆を見つけて帰らないと激詰めされるという恐怖の元、スーパーのミステリーショッパーを行っていたそうです。
私自身も男ですが、銀座の高級デパートで化粧品のミステリーショッパーを休日に行ったこともあります。その時も、クライアントにとって価値のあるインサイトを見つけるために必死で行ってました。
②社外コミュニケーション能力
人によっては、転職によって、社外コミュニケーション能力を磨く機会を新しく得ることができます。
事業会社で内勤している場合、社外の人と接する機会がとても限られているケースがあります。
私はコンサルタントになる前は、事業会社で主に自社サービスを企画する仕事をしていたので、社外の人と会うことは稀でした。
コンサルタントに転職したての時は、名刺交換の仕方が分からず調べるレベルでした。
コンサルタントは基本的に”高いコンサルフィーを払った価値に見合う人なのか?”という厳しい目で見られます。
また、プレゼンした内容に対して、「なぜですか?」「具体的には?」「ほかに無いんですか?」等の質問をされ、ディスカッションすることが日々の仕事になります。
必然的に社外の人から好かれ、信頼を勝ち取り、行動してもらうためのスキルが身についていきます。
③知らないことに対して、飛び込むマインドセット
コンサルタントとして働くことで得られることで最も価値のあることは、「知らないことに対して、飛び込むマインドセット」であると思います。
私は新規事業への取り組みの積極性やレベル感の高さで有名な会社で新卒から5年間過ごしました。
社内での評価も高く、50名規模のマネジメントをする等、重要な仕事も任されていました。
しかしながら、自分が門外漢の領域で新規事業の事業部長ができるようになるイメージが数年後を含めてまったく湧きませんでした。
このことが、私のコンサルタントへの転職を考え始めたきっかけでした。
そして、戦略コンサルタントとして数年働いた今は、門外漢の領域の新規事業であっても事業部長としての働くイメージが付きます。
こういうことを調査して、戦略を立てて、それを事業計画に落とし込んで、必要なアライアンス先とはこのように交渉して・・・、というイメージです。
(もちろん、実際にそれがうまくいくかどうかや、周りから信任されるかどうかのレベル感の問題はありますが)
この様に数年間で意識が変わったのは、戦略コンサルタントとして短期間で様々な業界の調査、戦略立案に携わったからだと思います。
事業会社であれば一つの案件に2~3年単位で関わることになるので、なかなか短期間で新しい事業を構築するイメージをつかむのは難しいと思います。
逆にコンサルタントになっても身に付きづらいこと
逆にコンサルタントになると身につくと世間一般ではイメージされているが、実際ではそうでもないということもあります。
マネジメントスキル
まず、人をマネジメントするスキルはコンサルタントで最も身に付きづらいスキルの一つだと思います。
それは、コンサルタントという仕事が、画一化された仕事であり、マネジメント対象のメンバーも特定スペック/マインドの人材に偏っているからです。
事業会社であれば、企画職、エンジニア等の技術職、デザイナーなどのクリエイティブ職、アシスタントなどのバックオフィス系の職種を束ねてチーミングする必要があります。
職種ごとに必要とされる能力要件やモチベーションの源泉が全くことなる中で、他者を理解し、モチベートして動かしていく必要があります。
一方で、地頭が良くて、自律して動き、ハードワークにコミットする人のみで構成された集団であるコンサルティングファームのマネジメントは、このようなマネジメントと少し毛色が違い、マネージメントという意味での難易度は低いと感じます。
実際に、私が新卒で務めた事業会社には、マッキンゼー、ブーズ、A.T.カーニー等の有名ファームから転職してきたマネージャーの方が多くいましたが、みな、事業部メンバーのマネジメントに苦労していました。
多くの場合は、現場メンバーから信頼されず、嫌われ、現場からの評判が悪いということで、閉職に流れていきました。
ビジネスの肌感覚
コンサルタントは実際にビジネスの経営をするのではなく、経営者を納得させることがゴールです。
そして戦略策定にのみ関わるので、その戦略が実際にどういう結果になったのかを知ることは難しいです。(最近は業務に入り込むファームも増えきて、以前よりも手触り感は増しているのかもしれませんが)
これは、コンサルタントとしてのPDCAは回せても、事業者としてのPDCAを回す経験を積むのは難しいということです。
自分の脳内で考えた仮説と、実際のマーケットの反応との解離を埋めていく機会を持てないのです。
マッキンゼーでパートナーを務めた後に、DeNAを創業した南場智子さんも、コンサルタントとしてのスキルと事業を行うスキルは全く別であったいう趣旨の発言をされていたと思います。
実業で成功されたい方は、コンサルタントとしてのベーススキルを身に着けたら、プロモーションを目指さず、ファームを出ることも必要かと思います。
以上、戦略コンサルタントとなることで身につくスキル、つきづらいスキルを整理しました。
コンサルティング・ワークは短期間やるだけでも良い経験となるので、興味のある方は挑戦してみることをお勧めします。
スキルを身に着けるためにも、コンサルタントになってから役に立つ書籍のまとめです。
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