コンサルタント出身者が事業会社で嫌われる3つの理由と対処法【経験談】

コンサル出身者はどうすれば、事業会社で活躍できるか?

先日、勢いのあるメガベンチャーで働く友人が「会社が成長して採用力が増した最近、戦略コンサルタントが転職してきて、ワークしないケースが増えている」という話をしていました。

また、別のベンチャー企業で人事部の執行役員として働く友人は、大手戦略ファーム出身のCSO兼経企部長の働きぶりに不満がある様でした。

戦略コンサルタントが事業会社に転職して、良くない評価をされるケースはそれなりに良く聞く話です。

特に、一緒に仕事をする上司や経営陣からではなく、現場で一緒に仕事をする横や下のメンバーから嫌われるケースが多くあります

なぜ、元コンサルは嫌われるのか?

私自身は、事業会社のWeb系の事業部門から経営コンサルタントに転職しましたが、新卒で入ったその事業会社には有名な戦略コンサルティングファームからの転職者が多くいました。

マッキンゼー、BCG、BainからATカーニー、Strategy&、アクセンチュア、IBMなど、ほぼ全てのファームからの転職者がいたのではないでしょうか。転職時の役職もパートナーからスタッフ、第二新卒など様々でした。

そのような同僚をプロパ社員として横で見てきた為、戦略コンサルタントがなぜ、事業会社で嫌われるのか?を肌感覚を持って、理解することができます。

実際、私も事業会社にいるときに、戦略ファーム出身が上司になったことが複数回ありましたが、いづれの場合もあまりうまくワークしておらず、苦労しているのが部下からみてもはっきりわかりました。

周りの同僚がその上司のことを批判しているのが耳に入ることも多々ありました。

コンサルタント出身者が事業会社で嫌われる理由は、やはりコンサルティングファームで求められるネイチャーと事業会社で求められるネイチャーが少し違う点にあります。

①”論理的な正しさ”を追求しすぎて、もっと大事なものを見落とす

コンサルタント出身者が事業会社に移って、ワークしない、嫌われる一番の原因はコンサルティング時代に染み付いた”論理的に正しく”考えて、行動する癖が事業会社でのスムーズな業務を妨げるからだと思います。

これは論理的に考えて行動すること自体が悪いのではなく、「マネジメントやコミュニケーションにおいて他にもっと大事なことが色々あるのにそれを無視して論理的な正しさのみを追求する姿勢がおかしい」、ということです。

その大事なことというのは、共感や仕事の楽しさなど、人間の感情的な部分であり、社員が会社に毎朝行ったり、ビジネスを行う動機に関する部分です。

例えば、ただ少し自分の大変さを分かってもらいたくて相談しただけの部下を論破してしまったり、マイクロマネジメントや論理的妥当性のある施策のみを実施するマネジメントをしてしまい全く仕事が楽しくない職場を作り上げてしまったりします。

ある程度の論理性が担保されている組織であれば、楽しい雰囲気や創造的な雰囲気を重視すべきだと思います。

その様な組織でないと、新しいものを創造したり、優秀な人材を惹きつけることは難しいからです。

特に、事業会社で成果を出す人材は、コンサルティングファームで評価される人材とは異なるタイプであることが多くあります。

その様な成果を出す人材を惹きつけ、やる気にさせて、仕事をしてもらうためには、かくかくしかじかした論理的なコミュニケーションはそこまで役に立ちません。

それよりもいかにワクワクした雰囲気を醸し出すかの方が重要でしょう。

若手のうちにコンサルティングファームを離れた人ならアンラーニングしやすいと思いますが、マネージャー以上であればアンラーニングもなかなか難しいのではないでしょうか。

②ユーザー/エンドユーザーに対する想像力の欠如

コンサルタントが事業センスを身に着ける際に一番の障害になるのが、「PDCA」を回せないという点です。

例えば、コンサルタントが新規事業に関わったとして、その事業に関わるは通常は戦略検討の3か月だけです。

実際に事業を立ち上げる際に何が障害になったのか?、事業を立ち上げた後、ユーザーはどのように反応したのか?、それは、なぜなのか?、どうすれば、仮説の誤りを正して、アジャストした事業にできるのか?

これら、事業センスを身に着ける上で、最も重要なPDCAのDCAのフェーズをコンサルタントは経験できません

(もちろん、最近は常駐で新規事業の立ち上げ支援を行うファームもあるようですが)

この実際の事業経験の無さが、コンサルタントのエンドユーザーへの理解の薄さにつながり、現場メンバーとの温度感の差を生みます。

もちろん、実際にエンドユーザーに向けて、施策を考えて、実行してみる等、事業経験を積んでいくことでカバーすることはできます。

しかし、コンサルティングファームからの転職であれば、マネージャーなどの高い職位で転職することが多く、事業感覚のキャッチアップ、チューニングに苦労している人が多い印象です。

その様な方は、事業経験が積みたい、現場感覚を身に着けたいと説明して、現場タスクを実際にやらせてもらうのも有用だと思います。

あくまで、本人が可愛げのあるキャラであることが前提ですが、現場メンバーからしても勉強熱心で好ましい同僚に映るはずです。

③クライアントワークの癖が抜けず、上意下達な御用聞きに

「コンサルタントたるもの経営者の耳が痛いことも言うべきである」とは言うものの、実際は経営者やクライアント、パートナーの意向をくみ取って行動する癖がついているコンサルタントも中にはいると思います。

また、コンサルタントのゴールは”クライアントの高い満足度”ですから、クライアント(経営者)が何を考えているのかを必死に感じ取り、落としどころを考える癖をコンサルタントは自然に身に着けていきます。

この習性が事業会社で、現場メンバーから嫌われる一因になります。

事業会社の現場メンバーから見ると、上司(経営者)におもねっている様に見えるのです。

コンサルタントは数か月の契約で嫌われると切られて、お呼びがかからなくなるので、相手が何を考えているかを考え、失敗しないことが重要です。

一方で、事業会社は終身雇用で、上司に反発しても首は切られないし、より長い期間の業務の成果で挽回することができます。

したがって、その会社のカルチャーにもよりますが、事業会社のメンバー(特にエース級の人材)ほど、上司や経営者の意見に気軽に意を発します

このようなビジネスパーソンから見て、経営者の考えていることを実現しようとするコンサルタント出身者は経営者に付和雷同するだけの人材に映ってしまいます。

事業会社で優秀な人材が、どのようなことを考え、上司や経営者とどのようなコミュニケーションを取っているかをよく観察してみると良いと思います。

本当にコンサル出身者は事業会社で活躍できないのか?

では、コンサル出身者は事業会社に転職しても活躍できないのでしょうか?

私は上記の注意点に留意しつつ、コンサルタントとして培ったスキル・マインドセットを活用することで活躍することが可能だと考えます。

どのような職種、業界に転職するかにもよりますが、コンサルタントの方の転職先として多い企画職において活用できるコンサルスキルは以下のものになります。

⓵情報収集、キャッチアップ能力

コンサルタントが転職する際に、転職後すぐに活躍できる機会の一つは、間違いなく情報収集能力やキャッチアップ能力だと思います。

コンサルタントは、様々な業界、領域の経営課題を数週間から3か月程度の短い期間で把握し、検討します

プロジェクトが始まって、キャッチアップに使える時間は良くて1週間、余裕が無い場合は土日でキャッチアップして、すぐに翌週から分析・仮説づくりを進めなければならない状況も多くあります

このような働き方は、事業会社ですることは無く、かなりエキセントリックに映ります。事業会社では、異動があったとしてもキャッチアップ期間はもっと長く引かれていますし、そもそも異動になっても同じ業界や職種間での移動であり、短期間に大量のキャッチアップをすることは多くありません。

その様な事業会社のメンバーから見て、コンサルタントの情報収集能力やキャッチアップ能力は非常に頼もしく映ります

コンサルタントとしては当たりませの、デスクトップリサーチ、知見者インタビュー、グループインタビュー、ウェブアンケートなども、事業会社ではやったことが無い人がほとんどです

情報量やその業界の人が盲点とする確度からの情報収集により、優位性を作り出すことは比較的容易にできます

実際、私も新卒で入社した事業会社で働いているときに、BCG出身者の先輩の国内外のスタートアップ情報の収集スピードと量に圧倒された記憶があります

②経営層とのコミュニケーション能力

コンサルタントが得意とする業務の一つが、経営層(CxOクラス)とのコミュニケーションです

これは、経営層と同じ視座を持っていることと、忙しく、業務範囲も広いCxOがストレスを感じづらいコミュニケーションを取れるスキルを有しているからです

コンサルタントとして徹底する、論点を軸とした検討プロセスとロジカルシンキング、一読しただけで要点が掴めるパワーポイント作りプレゼンスキルは、事業会社ではなかなか身につきづらいものです

そもそも、事業会社とコンサルでは、作成するパワポの数も、求められるクオリティの高さも比較にならないので、圧倒的な優位性があります

これらのスキルを活かして、経営層と現場のコミュニケーションのパイプ役になるのは、コンサルタントが転職先で生き残る一つの方法になります

③精神的・肉体的負荷への耐性

コンサルティングファームで働く精神的、肉体的な負荷は非常に高いです

矢面に立つことは多々ありますし、チームメンバー数人で数千万円のチャージに対する責任を果たすことの精神的なプレッシャーは計り知れません

事業会社でも売上責任や予算は当然ありますが、プレッシャーを感じる程の責任があるのは一部の役職者以上に限られます

厳しい環境で働くことが当たり前になっているコンサルタント出身者は事業会社でしか働いたことが無い方に比べて、厳しい状況でも高いパフォーマンスを発揮できるでしょう

実際は、活躍している方もいます

ここからは、私が事業会社で働いていた際に見た、実際に事業会社で活躍されていた方をご紹介します

A.T.カーニー出身のOさん / 国外展開担当

A.T.カーニー出身のOさんは、国内主力事業の国外展開(Go-To-Maket)を担当されていました

この方はコンサルタントスキルを存分に活用しながら、自分の苦手なことには足を踏み入れずに立ち振る舞うことで、上層部、同僚、部下全てから評判の高い方でした

具体的には、経営者のやりたいことを現場に落とすパイプ役として国外展開を推進

さらに、外部コンサル、調査会社、インタビュー会社など、コンサルティングファーム時代から活用してきた外部ベンダーも活用し、ポジションを確立

さらに、ポイントとなるのは、事業の肝となる部分は事業経験者に基本的に任せるスタンスで、でしゃばらず、自身はプロマネ的に動くことで、敵を作らず、同僚からも評判が良かったです

Oさんは、コンサルスキルを存分に使い、ポジションを確立しながら、事業勘が無いなど弱点に関しては他人を上手く立てることで地雷を避けて、事業会社でも成功されたのです

アクセンチュア出身のTさん / サービス責任者

アクセンチュア出身のTさんは、入社後、あるサービスの責任者に就任しました

転職当初のTさんは、そのサービスへのコミットメントが素晴らしく、精力的にたくさんの施策を企画・推進されていました

そんなTさんですが、入社当初は、マネジメントで苦労されていました。自分の配下のメンバーへの当たりが強すぎる(詰めてしまう)ので、メンバーが委縮して異動を希望する、人事に相談する等のトラブルが散見されていました

事業会社は、コンサルティングファームの様にコンサルスキルといった一様のスキルを持った、高いコミットメントと高いモチベーションを持ったメンバーのみで構成される組織ではありません

コミットメントが欠ける人もいれば、スキルがおぼつかない人もいます

その様な人たちも気持ちよく働けるように、マネジメントは上手く配慮することが必要ですが、ファームの一様のカルチャーでしか働いていたTさんにはそれがなかなかキャッチアップできませんでした

結局、Tさんはメンバーのマネジメントは別の者に任せることにして、自身はサービスの責任者として、PLやその改善のための施策のみに注力する様にし、結果として、チームは上手く回るようになりました

苦手なもの、自分ができないものは、できる人に任せれば良い」というのは、ファームでもよく聞く考え方です。事業会社では、多用な人材がいますので、この考え方はより有効に機能しますので、一人で全てを抱えずに、周りを上手く使うというのは非常に大切です

まずは、正しい情報収集で不安の払しょく

これまで紹介してきた内容により、ポストコンサルで事業会社に転職した場合、コンサルタントとしてのスキルを上手く活かしつつ、苦手なことは他人に任せることで、事業会社の事業サイドでも活躍できることがお分かり頂けたかと思います

今回は、私の事業会社での経験からお話させて頂きましたが、実際に転職を検討する方は、まずは、事業会社の担当者や経験豊富なキャリアエージェントに相談をしてください

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以上、コンサルタントから事業会社への転職時に留意すべき点を述べました。

感想やご相談があれば、気軽にお問い合わせから連絡ください。

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