BCG御立氏「戦略脳を鍛える」を5分で理解する

ボストン・コンサルティング・グループの日本支社長であった御立氏の「戦略脳を鍛える」の内容を5分で理解できる様に紹介します。

書籍ではインサイトを導出することで、勝てる戦略を構築する方法が解説されています。ケース面接の対策にとどまらず、実ビジネスで成果を出す目的においても必読です。

<<戦略脳を鍛える>>

御立氏について

御立氏は京都大学を卒業後に新卒で日本航空に入社。ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後、ボストン・コンサルティング・グループに入社後、日本代表を務めるという経歴です。

とても品があり、人格のある方だと色々な方が仰っていますね。

勝てる戦略の公式とは?

まず、勝てる戦略策定において、”ユニークさ”が必須要素であると解くことから書籍は始まります。ユニークさ、独自性の無い戦略では、競合も検討している可能性が高く、差分が生まれないからです。

勝てる戦略においては、コモンセンスである”戦略の定石”だけでなく、そこから差別化要素となるインサイトを含んでいる必要があります。

英語のインサイト(Insight)を和訳すると、「洞察」、「眼識」、「識見」を意味します。中を(in)+見る(sight)という成り立ちであり、表面的なもの中にある本物を見る、というニュアンスの言葉です。

表面的なものの見方ではなく、何か独特の切り口で、対象の本質を切り結ぶことこそが優れた戦略の構築を可能にします。

優れた戦略の要諦となるインサイトは”スピード”と”レンズ”によって、導出することが可能であると説明されています。

スピード”といのは、定石的な戦略からインサイトを含むユニークな戦略への進化を加速化させるものである。

”レンズ”はユニークな仮説を導出するための、ものの見方であり、思考の非連続的な飛躍を可能にするツールと定義されます。

“スピード”を上げる方法は?

思考のスピードは”パターン認識”、”グラフ発想”、”シャドウボクシング”に分解されます。


パターン認識は過去の定石を使いこなすこと、グラフ発想は右脳を活用して仮説を導出すること、シャドウボクシングは生じた仮説の検証と修正を拘束で実行することを指します。

パターン認識

優秀な戦略コンサルタントは勝ちパターンを抽象化し、”使える手”として保持している。そのパターンを活用することで新しい戦略を手早く構築することができます。

スケールカーブ

規模が拡大することで、多数のロットで共通費をカバーすることができ、結果としてコスト競争力が上がる業界がある。

紙パルプ業界や化学業界など、大規模設備が必要で、かつコモディティ製品を製造してるような業界において顕著です。

経験曲線

同種の製品の製造する経験を積むほど、歩留まりが減少し、製造コストが減少していく現象。

例えば、任天堂のハードウェアは最初、製造コストを下回る価格で販売し、赤字となる。その後、経験曲線により製造コストが下がることで、ハードウェア収益が黒字化する。(さらに、任天堂の場合は、自社ソフトウェア、及び3rdパーティーの収益があるのでハードウェアは最初、収益性が低くても多く売れた方が良い)

コストビヘイビア

業界によりコスト構造が大きく異なる。その構造を捉えた戦略を構築することが重要。

セグメンテーション

特にマーケティングにおいて、どの顧客層をターゲットにするのか?絞り込む意思決定。「戦略とは資源を特定箇所に集中し、他を切り捨てる行為」という概念においては、最も基本となるコンセプトです。

スイッチングコスト、ロイヤリティ、ブランド

競合企業との関係性の中で顧客を維持・獲得するために、ターゲット顧客の心理的側面に焦点を当てたコンセプトスイッチングコストを高めるために、ロイヤリティの向上が必要になり、そのためにブランド強化が有効

V字カーブ

業界内の企業を規模と収益性でプロットした際に、V字型の軌跡を描くことがある。規模が大きい企業はスケールメリットを活かして戦い、小さい企業はニッチな層に絞って展開することで効率な経営を行うことができる。中途半端な企業は収益性が低い

アドバンテージ・マトリクス

業界の競争優位性の種類を優位性構築可否戦略変数の数で4つに分類。規模が重要な規模型事業、独自性の追求が重要な特化型事業、規模拡大してもコストメリットが薄い手詰まり型事業など。

デコンストラクション

既存の業界構造を破棄して、別の事業構造を構築して戦うこと。構造的な大きな変革を伴うため、業界の競争環境を大きく変えうる手

ファースト・ムーバー・アドバンテージ

競争相手よりも先に動くことで、独占的な地位を構築すること。ビジネスにおいて必勝の手とされるが、後発のFacebookがMySpaceに勝った様に、インターネット業界では必ずしも有効に機能する訳ではない。

プリエンプティブ・アタック

一気呵成な事業展開で一気に市場シェアを獲得することを目指す戦略オプション。メルカリやグノシーがVCから調達した資金をテレビCMに多額に投じて、一気に市場シェアを獲得した。

タイムベース競争

”時間”に焦点を当てた競争戦略。市場変化から商品投入までのタイムラグを最小にするオペレーションを構築することで、収益性を高める等

組織学習、ナレッジマネジメント

企業内の”人材”に焦点を当てた戦略オプション。人材の質やスキルが競争優位性構築に重要な業界において特に検討に値する

グラフ発想

右脳をフル活用してビジュアルに考えることで、新しい視点から仮説を構築する。

グラフ発想の元になる考え方はモデル化で、考える対象を変数の組み合わせにすることで、様々なシミレーションが可能になる。

シャドウボクシング

パターン認識、グラフ発想で考案された数々の仮説を検証し、妥当性を検証する。

仮説に対して、様々な角度から反論を試み、その反論に耐えうるロジックを構築していく。イメージから考案された仮説はファクトや定量的な反論を試み、戦略パターンから生じた仮説はイメージを具体化させ、ディティールを詰めていく。

また、シャドウボクシングコツは、「二重人格的に物事を観る」、「頭の使い方のクセを知る」ということがコツであると述べられています。

レンズを変える方法は?

レンズとは独自性のある戦略を構築するための、モノの見方です。人は各々の視点でしか物事を観れませんから、人とは違うモノの見方をし、独自の仮説を構築できることが付加価値になるのです。

モノの見方、視点を変えるフレームワークであるレンズは、3つの構成要素に分けられます。その3種類にはそれぞれ、典型的な9つの使い方があります。

ホワイトスペースを活用する

これまで市場だとは思っていなかった場所を市場と定めて事業展開するケース。

書籍では消費者自身が加工して利用していた領域までプロセスチーズ事業を拡大していったクラフトの事例が載っています。

バリューチェーンを広げる

企業が属する業界のバリューチェーンを風上から風下まで通して検討するケース。例えば、トヨタは自動車製造がメインですが、販売もしていますし、アフターサービスとして保険の販売もしています。

進化論で考える

時間軸をずらして、業界の変化を検討する思考法です。

例えば、アメリカで生まれた事業を日本でいち早く展開するタイムマシン経営などがこれにあたります。また、業界の変化の方向性から新しい打ち手を考えるという方法もあります。

ユーザーになりきる

マーケティングや商品開発において基本となる重要な考え方で、自身がユーザーとして活動することで体験知を得ます。実際に体験することで、机上では得られなかった重要な示唆や発見が可能となります。

テコを効かせる

対象を構成する変数のうち、波及効果が最も大きくなるポイントを探します。

例えば、Nikeの様なスポーツブランドにおいては広告を依頼するスポーツ選手がテコとなるポイントになります。

ツボを押さえる

企業活動、競争環境において、最小の投資で最大の効果を生むポイントを探します。テコを効かせると似た考え方だと思います。

逆バリする

競争相手や世間の常識の逆のことを行う発想法です。多くの人が考えていることと逆側に向かうため、当たれば一気にブルーオーシャンに到達することができます。もし外れた場合は、何も起きません。

特異点を探す

集団の中から外れ値(アウトライヤー)となっている要素に注目して、発想します。

なぜ、その個体がアウトライヤーとして存在しているのかは重要な示唆になります。実はその個体だけが気づいている真実がある場合や、ニッチ市場の発見につながるからです。

アナロジーで考える

他業界での成功事例から成功要素を抽出し、自業界において当てはめる方法です。著名な発想法であり、多くの書籍で紹介されています。

アナロジー思考を身に着けるためには、物事の背後にあるメカニズムを意識するクセをつけると良いと解説されています。


以上、元ボストンコンサルティンググループ代表である御立氏の「戦略脳を鍛える」の内容を紹介しました。

書籍では、具体的な事例を交えて解説されているので興味のある方はご一読ください。

<<戦略脳を鍛える>>

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