過去に実際に受けたケース面接を紹介します。
今回は「まず初めに市場規模算出を行い、その後に成長戦略を検討する」というパターンのものです。
これはケース面接で最も出題されることが多いパターンです。
ケースの進め方はある程度、パターン化できるのでコンサルタントに転職する方はしっかり練習しておくと良いと思います。
前提
- 戦略ファーム1次面接
- 面接官は若手スタッフ
- ケース課題の説明後、10分程度の準備時間あり(面接官は退席)
ケース課題
雑談の中でケース面接を設定するパターンでした。
面接官の方の「最近、気になるサービスはありますか?」の質問に、「UberEatsを良く使うようになった」と回答したことから、お題がUberEatsになりました。
- UberEatsの国内での市場規模を算出してください
- UberEatsの売り上げを拡大する方法を考えてみてください
※「最近、気になるサービスは?」「気になるビジネス・ニュースは?」からケースが始まるパターンも多いので、事前に準備しておくと良いと思います。
回答した内容
以下、回答した内容です。面接官とのディスカッションの中で、答えた内容も含めて記載しています。
市場規模の算出
市場規模を算出する際は、まず、①需要サイド(この場合は顧客数等)から計算するか、②供給サイド(例えば、UberEatsの配送員数や加盟レストラン数とか)から計算するかを考えます。
②供給者サイドからの計算ですが、UberEatsの配送員が労働者の何割であるとか、どれくらいのレストランがUberEatsに加盟しているのか等は、肌感覚でも推定するのが難しそうです。
そこで、今回は、①需要サイドから計算することにします。
UberEatsは人口密度の高いある程度の都市圏でのみ営業されていることに注意して、以下の数式を立てます。
UberEatsの市場規模=日本の人口×対象地域割合(全人口の1/3が住む都市圏がUberEatsの対象地域と仮定)×利用者割合(最初は10%と仮置き)×利用回数/年(平均して隔週で1度使う等)×利用単価(1500円等)
「UberEatsの利用者」は、月に1度以上UberEatsを利用する人と定義します。
次に、利用者割合は10%等のある程度ざっくりした仮定で良い場合もありますが、今回は面接官から「より詳細なロジックを組んでください」との指示がありました。
さて、利用者割合を細分化するとしたら、どのように分解できるのでしょうか?
例えば、プロセスで分解してみるとします。UberEatsを利用するまでの過程には、①認知する→②興味を持つ→③DLする→④利用する→⑤継続する、があります。
この細分化で、⑤の継続しているユーザーの割合を算出する手がまずありましす。しかし、あまり腹落ち感がするロジックではありません。
(腹落ち感が無いのは、このプロセスのフレームワークがUberEatsの特性を独自に捉えたものではないからです。分析が浅いということです。)
そこで、UberEatsの利用者の属性を考えることで、細分化することを試みます。
UberEatsを利用する人とはどのような人でしょうか?
まず、モバイルアプリを使った最新のサービスを利用するユーザーというのは、アーリーアダプターである程度、年齢の若い層(20~30代)であることが良そうされます。
次に、UberEatsは自分で買いに行く代わりに送料を支払うシステムです。このことから、UberEatsを利用する人が金銭的に余裕のある層(例えば、年収600万円以上とか)であると考えられます。
また、近くにあるはずのコンビニを利用せずにUberEatsを利用する人はどのような人でしょうか?食べ物に関するこだわりの強い人である可能性が高いです。
以上の3要素からUberEatsの利用者を絞りこむことができます。
UberEatsの利用者割合=20~30代割合×年収600万円以上の割合×食べ物にこだわる人の割合(例えば、職場で外食ランチに出かける人の割合で置換)
市場規模の算出に関しては、以上の様なディスカッションを行いました。
UberEats事業の成長戦略
次に、UberEatsの事業成長戦略に関するディスカッションです。
成長戦略ディスカッションの前に
前述したとおり、市場規模算出をした後の成長戦略の策定はケース面接において、頻出のパターンです。
このパターンの際に重要なことは、
成長戦略を検討するときに、
必ず”ケースで使った数式”を基に検討するということです。
このタイプのケースで最初に市場規模算出をさせるのは、成長戦略の前振りとしての役割があります。
成長戦略のディスカッションをする前に、市場規模算出で数式を作成することで、全体感の共通認識を形成しディスカッションが無駄に食い違うことを防ぎます。
今回で言うと、以下の数式です。
市場規模=人口×展開地域割合×利用者割合×利用頻度×利用単価
※売上=市場規模×シェアなので、正確にはシェアも検討すべきです。
しかし、UberEatsはフードデリバリーで目に付く競合がいないので、シェアの検討はスキップして問題ないでしょう。出前サービスは旧来からありましたが、UberEatsはそこからユーザーを奪ったわけではありません。
ディスカッションの進め方
実際のディスカッションは、作成した数式のどの項目を成長のドライバーとして伸ばせそうか?を順番に検討していきます。
人口
日本の人口を増やすのは一企業では難しいので、検討対象とならないでしょう。
展開地域割合
展開地域を拡大するのは有効な打ち手ですが、限界があります。
UberEatsのビジネスモデルでは、密度の経済が働くからです。UberEatsの配送員が収益を得るためには、時間当たりの注文回数が多く発生する必要があります。したがって、展開地域は人口が多く、かつ、UberEatsを利用する若者が多い都市部である必要があります。
利用割合
利用割合を増やすのも、難しいところではあります。
市場規模算出において、現在の利用者を①20~30代、②高所得者層、③食にこだわりのある層、としたので、それ以外の層に拡大の余地がないかを考えます。
①20-30代以外の層に訴求できる可能性は高そうです。主婦が料理を作る手間を省くために、家族分の料理をUberEatsで注文する可能性は十分あるでしょう。
また、アプリ利用との相性は悪いですが、配送ビジネスは移動に難を抱えるシニア層にも十分需要があると考えられます。
利用頻度
利用頻度を向上させることも可能でしょう。利用頻度を上げる程、お得になる施策を実施することができます。
ただ、結局は原資を使って割引をすることになるので、劇的に効果を生む施策とはなりそうにありません。
利用単価
利用者当たりの利用単価を上げる方法は、①商品の単価を上げる、②商品注文点数を増やす、③商品種類を増やすの3つが考えられます。
例えば、③商品種類を増やすのはどうでしょうか?米国ではInstacartという食料品の買い出しを代行するCtoCサービスのユニコーン企業があります。
Instacartの様に、食料品の配達も行うのはどうでしょうか?
以上、数式の項目に則って、成長要素となるドライバーを探索しました。これで良い案が出てくることもありますが、今回は大きな成長要素を見つけることはできませんでした。
追加のディスカッション
事業のKPIを構成する要素からドライバーを探索しましたが、突破口になるものは見つかりませんでした。
そこで、次は、UberEatsが保有するアセットから何か新しい事業を起こせないかを検討してみます。。
UberEatsが保有するアセットのうち、関係性のあるステークホルダーとしては
- アプリ利用者(主に20~30代)
- 配送員
- レストラン
先ほどの配送する商品種類を増やすというのは、アプリ利用者と配送員のアセットを活用した新事業の展開でした。
UberEatsのアセットには、さらに、ソフトウェアのアセットもあります。
- モバイルアプリ
- マッチングアルゴリズム
UberEatsは至るところで発生する利用者からの配送依頼と配送員を効率良くマッチングするアルゴリズムを開発しているはずです。
このアルゴリズムを活用して、例えば、運送業やタクシー業に進出する(協業含め)のはどうでしょうか?
磨きこんだアルゴリズムを起点にした新事業の展開は一考に値すると思います。
以上が今回のケース面接の大筋でした。
事業拡大に関しては、効果的なアイデアが出たわけではありませんでした。
これはケース面接ではよくある話で、特に実際に存在する企業をテーマにしたものですっきり答えが出ることは稀です。(素人が1時間で答えが出せる程度のことは、その企業は既にやっているので)
ケース面接で大切なことは、答えを出すことではなく、どんな状況でもフレームを切って、検討を前に進める主体的な態度だと思います。
今回は、UberEatsに関するケースを取り上げました。
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