ビジネス・アライアンスについて理解する際に有用な書籍があったので紹介します。安田洋史『アライアンス戦略』です。
著者は青山学院大学経営学部教授の安田氏で、アライアンスに関して基礎的な内容を体系立てて解説されています。
外部環境の変化が激しく、企業が必要なアセットを自社内部で調達することが難しくなっている昨今、ビジネス・アライアンスの重要性は増しています。
また、大企業だけでなく、新興企業においてもアライアンスを活用した戦略は有効であり、メルカリは宅配業者やコンビニと密に連携することでフリマ市場において卓越したUXを構築し、急成長を実現しました。
著者について
著者の安田洋史氏は東芝の事業部長や提携戦略担当部長を経て、青山学院大学の経営学部の教授となりました。専門は経営戦略論、競争戦略論、アライアンス戦略論
アライアンス検討の進め方
著書はアライアンスとは「経営資源の交換」であるという考えを起点にアライアンスを説明しえちます。
企業におけるアライアンスの活用は以下のステップにおいて行われます。
①アライアンス戦略の立案
アライアンスは経営資源を外部から調達する行為なので、まずは調達しなければならない経営資源を特定することから検討が始まります。
企業における経営資源は、技術資源、人材資源、生産資源、販売資源、資金資源に分類され、それぞれ以下の要素が分類されます。
今後の事業展開の検討において、不足が予想され、入手する必要がある資源が特定された場合、次にその資源の入手方法を検討します。
資源の入手方法には、市場で他企業から対象を買い取ることで入手する①市場取引、自社内で必要な資源をゼロから構築する②内部成長、他企業との協業により入手する③アライアンス、他企業を買収することで獲得する④M&Aに分類されます。
この中で、将来のリスクや金銭的価値を考慮した”取引コスト”が最も低くなる方法で不足資源を調達します。
例えば、ある資源Aを市場取引で調達していたとします。しかし、この資源Aは今後、供給量が減少し、継続的な市場からの調達が難しくなると予想があった場合、市場取引で調達するよりも、アライアンスで継続的な関係性を構築した上で調達した方が良いかもしれません。それどころが、価格が上昇する前の現在の時点で取引先企業を買収しておいた方が安上がりな可能性もあります。
このように、取引コストが最小となる調達形態を模索します。
②アライアンスパートナーの選定
”アライアンス”が最も取引コストが最小になる調達形態であった場合、次にアライアンスパートナーを選定します。
アライアンスパートナーの選定クライテリアは4つあります。
今回の調達を図るに至った①戦略との適合性、自社企業とのスムーズに業務をマージできるであろう②文化的適合性の高い企業、不確実性要素の少ない③リスク要因の小さい企業、最後に、ビジネス構築のための学習コストの小さい企業(既に別の事業でアライアンスを構築している等)を選択する④学習要因。
③、④アライアンス条件の交渉と契約書の締結
パートナー候補を決定した後は、パートナー候補との交渉を開始します。パートナー候補のロング/ショートリストを作成し、先ほどのクライテリアで判定した優先度の高い企業から交渉を行います。
交渉や契約の論点としては、提供する経営資源の定義、制約条件、対価、保証と補償に加え、資源の提供方法を定義する実施許諾や実施期間や終結条件を合意します。
⑤ガバナンスの設計
実際にパートナー企業とのアライアンスが合意に至った後は、ガバナンスルールを設計します。
ガバナンスの方法は、出資などの資本関係に基づく統治である①資本的ガバナンス、契約や組織体制などの取り決めに基づく統治である②契約的ガバナンス、共同作業やコミュニケーションを通して行う③関係的ガバナンスに大分されます。
⑥プロジェクト運営
アライアンスを成功させられるかどうかは、現場のオペレーションの能力に依存します。この運営のレイヤーでは経営層やアライアンス担当役員だけでなく、現場レベルでの企業の実力がカギとなります。
異質な人材が交じり合い、新しい取り組みを進めるため、あらゆるリスクや失敗の種が存在します。そのいばらの道を進むうえで、高い学習能力や調整力、適応力が必要になります。
⑦終結と評価
最後にアライアンスを終了し、評価を行います。アライアンスの終了は当初の契約条件を満了して解消する場合と、見直しや解約など当初想定していた目論みが外れたために損切り的に行われる場合があります。
合弁会社とM&A
最後に書籍では、企業間結合のパターンを分類するとともに、合弁会社やM&Aの性質について説明されています。(ここでは割愛します)
●企業間結合のパターン
以上、アライアンス戦略の概略について、安田洋史氏『アライアンス戦略論』を基に記述しました。
アライアンスに関して、『アライアンス戦略論』は体系的にまとまっていて良書であるため、アライアンス関連の担当になった際は一読することを推奨します。
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