企業人からみた経営コンサルタント 書籍『参謀の思考法』より

会社の上役が最近読んだと言ってた『参謀の思考法』を読んだので、今日はこの書籍を基にクライアント企業とコンサルタントの正しい関係性について考えてみたいと思います

この書籍は、ブリヂストンの元代表取締役社長である荒川詔四(しょうし)氏が、自身の経験から企業内の参謀としていかに考え、振舞うべきかを説いたものです

この書籍には、数ページに渡って氏の外部経営コンサルについての考え方が記載されており、企業側から見たコンサルタントを考えるのに有用です

外部コンサルの第一義的な意義

荒川氏は外部コンサルの第一義的な価値を、「社内常識に囚われない客観性」であると考えています

彼らが、事業分析などに専門性を有することはもちろん重要ですが、その最大の存在意義は、社内の「常識=パラダイムシフト」に囚われないために、より客観的に事業分析ができるとともに、人間関係や社内政治とも無関係であるがゆえに、それらの要因によって思考をゆがませることなく、より本質的な改革案を提示することができることにあります

そのため、優秀なコンサルタントであれば、全体状況を把握している社内の人間からすれば、「やっぱり、そういうことか」と腹落ちする戦略提案をしてくれることが多いと言えるでしょう

参謀の思考法より

これは、日々のコンサルティング業務で感じるところで、クライアントに求められるものは大きく分けて、①外部知見や専門性を提供し、②その専門性で持って、客観的に評価し、③その内容を忌憚なく伝えることです

もちろん、実際のワークでは、どこまでクライアントに伝えるべきか、というのは内々で相談して決めることもありますが、基本的にはクライアントには忌憚のない意見を伝えると感謝されます

逆に言うと、コンサルタントには常に、クライアントから反発されるような事実を伝える胆力と、その事実を論理的に説明できるアカウンタビリティを有する必要があります

コンサルタントの限界

外部コンサルタントの一番の価値を客観的な視点の獲得とする一方で、荒川氏は外部コンサルタントの限界を認識する重要性も説きます

ただし、コンサルタントの限界もしっかり認識しておく必要があります。まず、彼らの戦略提案は”大きな画”としては、有益でありつつ、それを”丸飲み”したら失敗が決まったも同然だということがあります

なぜなら、彼らは外部の人間であるがゆえに、会社の現場の”どうしようもない現実”や、組織に自然んい生ずるセクショナリズムや派閥などの”社内政治の現実”を深く認識することができないからです

参謀の思考法より

コンサルタントの仕事はよく、”絵に描いた餅”と揶揄されることがありますが、ある意味、そのような側面はあります

コンサルタントの最終成果物である報告書は、机上の理論・調査でブラッシュアップされた初期仮説にすぎません

あくまで、実行しながら新しく分かった事実や事情を考慮して修正していく必要があります

コンサルタントはそのことを当然認識していますが、コンサルを使う側の企業担当者もそのことをよく認識し、”うまく使おう”と考える必要があります

コンサルタントを使ったことがない企業担当者は、コンサルタントを万能な魔法使いの様に「正解を持ってくる人」だと認識してしまうことがあります

このような担当者と仕事をすると、このコンサルタントの役割(限界)の認識によるボタンの掛け違いにより、プロジェクト中に揉めることがあるので注意が必要です

荒川氏はこのコンサルタントの限界を理解した上でのコンサルタントの使い方は、”コンサルタントの描いた大きな画を、現場に精通した参謀がかみ砕いて実行する”というスタンスであると述べています

トレンドである実行請負型のコンサルについて

荒川氏は最近のトレンドである実行請負型のコンサルに対しては、非常に否定的です

その理由は、①コンサルタントは結局は最終責任を負えないこと、②コンサルタントへの丸投げとなると社内人材が育たないからとしています

実行請負、現場支援型のコンサルティング業務が増えている理由の一つは、企業側の採用難や働き方改革による人手不足がある為、致し方ない部分はあります

しかし、コンサルタントとしても実行支援は本来の得意な提供価値のスコープからはズレていますし、あまり積極的に踏み出さないのがコンサルタント、クライアント双方にとって良いのではないかと思います

さらに問題なのは、コンサルタントが戦略提案をするのみならず、実行まで請け負うケースです。こちらは、より大きな問題を生み出す可能性があると認識しておく必要があります。

注意点は二つ。一つ目は、コンサルタントが実行まで請け負う場合には、契約を期間限定とし、結果は厳しく問うべきです。二つ目は、実行段階では、彼ら自身での関与を最低限にさせて、デキる限り自社の人間で実行すべきだということです。

参謀の思考法より

以上、荒川氏の『参謀の思考法』を基に、クライアント企業とコンサルタントの正しい関係性について記載しました

コンサルティングファームへの転職を検討する方の自身のキャリアや志望動機、ファームに入ってからの考え方や振舞い方の参考にして頂けると幸いです

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